youtubeには正規動画から著作権を無視した動画まで数多の動画が魍魎跋扈しています。では何が著作権違反で、何が著作権をクリアしているのでしょうか。この基準について考えてみます。
結論
はじめに結論ですが、DECO*27やヨルシカの著作権に対する扱いを読む限り、多くの楽曲製作者は”オリジナル楽曲をそのままの形で”流すことは禁止されてそうです。一方で、完全に非営利目的な歌ってみた動画等に関しては許可不要で作ってよいと記載されている方も多いです。
具体的にDECO*24、ヨルシカ、Orangestar、ポケモンbgm、クラシック音楽における、個別の著作権ポリシーについて見ていきましょう。
よくある勘違い
概要欄にある「YouTube に使用を許可しているライセンス所持者」として掲載されているものは、Youtube配信者がコンテンツ登録を行った際に自動判別で表示されるものであり、この表記があるから動画利用を許諾している、というわけではありません。
→”Youtubeに使用を許可”と表記されている楽曲を使用するのは基本的に著作権違反です。
ヨルシカの楽曲の使用許諾
ヨルシカは公式で明記しています。
NG
①オリジナル音源と画像を使用しての動画。
②オリジナル音源を倍速にするなどの意図的な変化をさせて使用している動画。
③ヨルシカやn-bunaのオリジナル音源を1つの動画にまとめている、いわゆるメドレー動画。
→まとめると、”オリジナル楽曲を使っている動画はすべて著作権違反”ということになります。
OK
①いわゆる弾いてみたのような、オリジナル音源に楽器の音を被せた形での演奏動画。
②個人で作成した音源トラックを使用したカバー歌唱動画。
③ダンスや振付などのいわゆる踊ってみた動画でのオリジナル音源の使用。
→”オリジナルじゃない(個人が歌ってたり演奏してたり)なら良いよ”ということです。
DECO*27の使用許諾
DECO*27は言わずと知れたボーカロイドの大手ですが、DECO*27の楽曲は株式会社OTOIROで管理されています。なので、OTOIROの利用規約を見れば著作権の範囲が分かります。
NG
①作品のイメージを損ねる二次創作(人種や宗教や公序良俗等)
②公式コンテンツと詐称、もしくは誤認されうる作品を作ること
③公式作品をそのままのかたちで利用、または改変して利用すること
→広告をつけた動画で公式楽曲のメドレーを使うのは著作権違反の可能性が高いです。
OK
①無償での使用。同人誌の無償配布やブログ上で公開すること。
※二次作品は、すべて「© OTOIRO / DECO*27」の表示を行う必要があります。
→一切広告等もつけていない配信で背景bgmに使うのは問題ない可能性が高いです。
法人での利用や、有償での利用についてはすべて”お問い合わせしてください”ということです。
①youtubeパートナーシップで収益化している人物が広告をつけて歌ってみた動画を投稿すること
②収益化している人物が背景bgmとして使用すること
などは問い合わせる必要があります。無断での使用は著作権違反の可能性があります。但し、問い合わせたならば、多くの歌ってみた動画を見る限り、パートナーシップ程度の営利利用であれば許可を得られる可能性は高いと思われます。以下urlの利用規約には問い合わせフォームがあります。DECO*27の楽曲の歌ってみたをパートナーシップで投稿したい場合は問い合わせることをお勧めします。
Orangestarの使用許諾
Orangestarも言わずと知れた大手ボカロPです。
Orangestarはtwitterで以下のような発言をしています。
僕の楽曲の二次創作は基本非営利目的であれば自由なので名前(Orangestar)か曲名をどこかに入れていただければ報告もしなくて大丈夫です。未投稿曲の場合も自作オケで歌ったり演奏した動画を上げる分には上と同じ条件でいいと思います。アルバムの音源をそのまま使うのはやめてください。
Orangestar 公式twitterより。
NG
・公式の音源をそのままbgmや二次配布に使う行為
・営利目的で許諾なく二次創作物を作成すること
→Orangestarのオリジナル楽曲を用いたメドレーは著作権違反に該当します。
→Orangestarの歌ってみた動画をCDにして配布することは著作権違反に該当します。
OK
・非営利目的で二次創作(歌ってみたや演奏してみた等)を投稿すること
※Orangestarの名前を概要欄等に明記する必要がある。
グレーゾーン
・youtubeパートナーシップで歌ってみた動画を投稿する行為は、営利目的ともとれる
・Orangestarの楽曲を歌ってみた動画をメドレーにしてyoutubeで広告つけて配布する行為
例えば、以下の動画は公式の音源をそのままメドレーにしているので、orangestarのtwitterでの発言基準では著作権違反です。但し、概要欄にorangestarの名前を明記しており、何より”広告がついているものの動画作成者は一切の収益を受けておらず、全て権利者に譲渡している”ことからOKである可能性が高いです(投稿者発言が本当であればですが)。これでもし営利目的として広告収入を得ていれば、オリジナル楽曲使用と併せて高確率でアウトだったと思われます。
誤解されると困りますが、私はOrangestarの楽曲かなり好きです。
ポケモンbgmの使用許諾
ポケモンbgmの利用規約は例外規定のせいでルールが複雑です。然しながら、ヨルシカに比べると随分著作権の基準は緩やかです。
OK
①Youtube広告による収益化(youtubeパートナーシップ)
②利用するにあたって収益が発生しない。
③楽曲をループさせること。利用したい部分を切り出すこと。
④演奏のために音源の速度や高低を変えること。
⑤学校や部活動、音楽教室で使用すること。
※動画の説明欄等に権利表記を入れる必要がある。
→ほとんど何しても著作権違反になりません。ポケモンbgmのループ動画、ポケモンbgmを流した配信など、これらはすべて著作権違反ではありません。学校利用を公式で認めているところがポケモンらしいですね。”利用するにあたって収益が発生しない”に対して、”youtubeパートナーシップでの収益化”は認めているためです。但し、他の方もそうですが、”どんな場合であれ著作権違反と判断した場合には削除する”ことを記載しています。あからさまにNG行為に抵触していない限り訴えられることはないと思われますが、違反報告されれば素直に削除することをお勧めします。
NG
①音源に加工すること。音速や高低を変えるなど。演奏の場合は許可する。
②動画配信のパートナー機能等以外で収益を得ようとすること。
③第三者に配布データを再配布すること。
④ポケモン公式が協力していると誤解されるような利用方法でないこと。
⑤ポケモン以外のキャラクターと併せての利用でないこと。
⑥Content IDに自身の著作物として登録すること。
→音源の加工がNGなのはヨルシカと同じです。なので、ポケモンbgmをDTM加工した動画などは著作権違反です。また、ほとんどの人には関係ない話ですが、ポケモンbgmを使用したゲームを新たに作ってお金を稼ぐなどは著作権違反になります。また、ポケモンbgmをまとめたCDを作って販売するなどの行為も再配布に含まれるので著作権違反に該当します。
クラシック音楽系の著作権
著作権は作詞作曲家の死後、亡くなった翌年から70年間は保護されますが、71年目以降は権利を消失します。つまり2023年であれば1951年以前に死去した音楽を使用するのは著作権違反にはなりません。ただし、何かしらのオリジナル要素の入った楽曲ではその限りではありません。
例えばフレデリック・ショパンは1849年に死去して、2023年時点で174年が過ぎているので著作権の保護対象ではありません。ただし、ショパンのオーケストラ演奏で何かしらオリジナルの要素を加えている場合ではその限りではありません。
同様に、ベートーヴェンは1827年に死去して196年が過ぎています。モーツァルトは1791年に死去して232年が過ぎています。シューベルトは1828年に死去しています。バッハは1750年に死去しています。こうした巨匠たちの作品は使用しても著作権違反にはなりません。
著作権違反だけど親告されずに生き残ってるアニソンメドレー
それでもアニソンのメドレー動画とか大量に削除されずに残っているじゃないか、という突っ込みもあると思います。youtubeの著作権基準は厳しいとか言われますが実態はかなりザルです。然し、著作権保有者が違反通報すれば当然消されます。
そもそも著作権侵害は親告罪であり、権利者が告訴しなければ何の処罰もありません。よほど著作権者が腹を立てればyoutubeに通報して削除してもらうだけでなく、裁判所に訴えて刑事/民事ともに罰則が科されることになるでしょう。しかし、裁判沙汰は面倒なので、悪質でない限りyoutubeの削除だけで済んでしまうことがほとんどです。(当然訴えられるリスクはあります)。メドレー動画の中には、通報される度に通報者の含む部分だけ削除してアップロードすることで、あまり通報しない権利者の音楽のみを使用しているものもあるでしょう。
私がアニソンメドレーを見始めたのが2010年頃ですが、その当時のメドレー動画はすべて著作権違反で削除されました。それでもアニソンメドレーは無限にアップロードされていますが、アップロード日を見るとマックスでも5年以内ではないでしょうか。割と頻繁に消されていることが分かります。さらに削除されていないアニソンメドレーはすべて広告がついていません。非営利目的なわけですが、非営利目的だからといって許されるかはグレーゾーンです。
アニソンメドレーを作って広告をつけるのは著作権違反でかなりの速度で消されています。メドレーにしている以上、権利者がたくさんいるわけで、JASDAC等も黙って見過ごすほど寛容ではないわけですね。営利目的で広告をつけてアニソンメドレーを作ることはお勧めしません。
最後に
DECO*27やOrangestarの著作権に対する扱いを読む限り、多くの楽曲製作者は”オリジナル楽曲をそのままの形で”流すことは禁止されてそうです。一方で、完全に非営利目的な歌ってみた動画等に関しては許可を求めずに作ってよいと明記されている方も多いです。これは恐らく、歌ってみた動画がボカロ曲の発展に一躍かってきた時代を踏まえてのことだと思います。
(色んな方の著作権ポリシーについて調べる中で感じていたこと)。そもそも著作権は親告罪で権利者が訴えない限り何の処罰もないわけですが、だからこそ権利者はどこまでが良くてどこからが許せないかをホームページ等に明記すべきかもしれません。
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