任天堂、バンダイ、スクウェアの著作権について確認してみます。結論としては、ゲームでは大抵の場合において著作権について寛大です。講談社や集英社のような出版社ほど厳密な著作権ポリシーは定めていません。
任天堂の著作権
結論ですが、任天堂の著作権は比較的寛容です。
任天堂は、個人であるお客様が、任天堂が著作権を有するゲームからキャプチャーした映像およびスクリーンショット(以下「任天堂のゲーム著作物」といいます)を利用した動画や静止画等を、適切な動画や静止画の共有サイトに投稿(実況を含む)することおよび別途指定するシステムにより収益化することに対して、著作権侵害を主張いたしません。
任天堂の著作物ガイドラインを確認する限り、実況配信やキャプチャ画像を共有することは許されています。内容が不適切な場合は削除されることもあるようです。実例では、ゲーム改造データを開発して動画投稿したユーザーに対して削除要請をしたことがあります。また、Youtubeパートナーシップのような形ではなく、例えば配信した動画を販売するようなことは禁止されています。ただし、これは任天堂が著作権を単独で有しているコンテンツに限られます。
マリオシリーズやピクミンシリーズのソフトパッケージの裏面や任天堂公式の紹介動画を見てみると、以下のようなコピーライトマークが確認できます。
©Nintendo
これは任天堂が単独で著作権を有していることを示し、このようなゲームに関しては任天堂の著作権ガイドラインが適用されます。一方で、著作権が複数いるコンテンツではこの限りではありません。例えば、ポケモンでは以下のように著作権が明記されています。
©1995-2023 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.
ポケモンでは著作権の保有者が3社います。任天堂、クリーチャーズ、ゲームフリークです。これら3社が出資してポケモン株式会社を作っています。しかし、ポケモン株式会社は著作権ガイドラインを公開しておらず、クリーチャーズ、ゲームフリークも同様に著作権ガイドラインを公開していません。ゲームそのものに関しても”ポケモンUNITE”を除いて著作権ガイドラインを公開していません。それゆえ、ポケモンのゲーム配信は黒寄りのグレーです。一方で、ポケモンの実況動画は世界中で大量に投稿されており、ほとんどが削除されていません。それゆえ、事実上黙認されている状態であるものの、いつでも訴えられる可能性を秘めている、と言えるでしょう。大手事務所に関しては事務所側と3社との間で許諾契約がある可能性があります。
また、著作権保有が複数人いるケースでは星のカービィシリーズも挙げられます。星のカービィシリーズでは、初代(1992年)を除いて以下のような記載があります。
©HAL Laboratory, Inc. / Nintendo
すなわち、星のカービィシリーズは HAL Laboratory(ハル研究所)と任天堂を保有しています。ハル研究所も公式には著作権ガイドラインを公開していません。星のカービィシリーズは初代(1992年4月)発売時はハル研究所だけが著作権を保有していたものの(“@1992 HAL LABORATORY, INC. LICENSED TO NINTENDO”)、ハル研究所は1992年6月に倒産し、その後1993年に任天堂の資金援助を受けて経営再建しました。1993年にハル研究所の威信をかけて発売した”星のカービィ 夢の泉の物語”ではこのような経緯があったためか、著作権表記は”@1993 HAL LABORATORY, INC @1993 NINTENDO”となっており、任天堂も著作権を保有するような記載に変わりました。以降は”@HAL Laboratory, Inc./Nintendo”という記載に統一されています。現在のハル研究所の資本構成は分かりかねますが、星のカービィシリーズの知的財産を管理する”株式会社ワープスター”はハル研究所50%任天堂50%となっています。ちなみに経営再建時にハル研究所の社員だった岩田聡氏は当社の社長となり、後々岩田聡氏は任天堂の社長となりました。任天堂とハル研究所の蜜月関係を踏まえると、基本的には任天堂の著作権ガイドラインが適用されると推測されるものの、確証は持てない、というところになります。
バンダイナムコの著作権
ガンダム、テイルズ、アイマス、太鼓の達人などのタイトルを要するバイダイナムコ。
バンダイナムコも任天堂と同じくらいには著作権に対して寛容です。
ゲームプレイの画像や動画は、ブログやSNSに投稿いただけます。
バンダイナムコ公式Q&A
当社は、このページに記載された内容を守っていただく限り、個人のファンの皆様があらゆるプラットフォームで自由にゲーム実況を行っていただくことについて、著作権侵害を主張しません。
バンダイナムコエンターテインメントゲーム実況ポリシー
つまり、普通にゲーム実況する限りであれば問題ありません。ただし、ゲーム核心に関する配信をする場合は「ネタバレあり」等の表示をして、まだゲームを遊んでいないファンへの配慮が求められています。また、個人や個人事業主なら実況は許されていますが、法人は認められていません。Youtubeパートナーシップ等による収益は認められているものの、それ以外の営利目的のゲーム実況は禁止されています。公序良俗に反するものやヘイトスピーチを目的とした実況も禁止されています。
尚、バンダイナムコでは二次創作ガイドラインは公開しておりません。事実上の黙認状態と言えますが、訴えようと思えば訴えられる状態ともいえます。とはいえ、私の知る限り2007年頃から今に至るまでずっと黙認のスタンスでいるように思います。
スクウェア・エニックスの著作権
キングダムハーツ、ファイナルファンタジー、ドラゴンクエストなどを擁するスクエニ。スクエニは任天堂やバンナムと違って、各ゲームごとに著作権利用条件を設けています。なのでゲームごとに確認する必要がありますが、基本的には任天堂やバンナムと同程度には寛容です。
ホームページやブログ等の外部サイト、ソーシャル・ネットワーキング・サービス、動画配信サービス等で公開するインターネット上でのご利用
ファイナルファンタジーXIV 著作物利用条件
例えば、ファイファルファンタジーXIVについてはブログや動画配信での利用が認められています。但し、著作権の表記(©)は必須です。動画共有サイトが正式に提供する収益化機能は認められています。
コメント
はじめまして!
任天堂についての項目でコピーライトについて言及されていますが、その区分ですと星のカービィシリーズも©HAL Laboratory,Ink./Nintendo表記になっているので不適切かと思います。メーカー表記であればカービィシリーズは任天堂、ポケモンシリーズはポケモンとなっているので、そちらの方が意図に添っているかもしれません。いずれにせよどちらのタイトルも結構解釈で別れそうな部分ではありますね。
はちやさん、コメントありがとうございます!
仰る通り 星のカービィシリーズは©HAL Laboratory,Ink./Nintendo表記となっておりますね。
記事を修正しました。ご指摘ありがとうございます。
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余談ですが、記事執筆時もこの辺りはどう書こうか悩みました。というのも、このハル研究所(HAL Laboratory)という会社の扱いが結構難敵なのです。
星のカービィの初代が発売されたのが1992年4月ですが、このときのソフト印字上(ゲーム画面上)の記載は”@1992 HAL LABORATORY, INC. LICENSED TO NINTENDO”となっております。つまり、HAL LABORATORY,INCが著作権を所有し、NINTENDOに著作物の使用を認めているという形です。最初はハル研究所が著作権を有していたのです。
一方で、この ハル研究所は1992年6月に倒産し、その後1993年に任天堂の資金援助を受けて経営再建を図りました。1993年にハル研究所の威信をかけて発売した”星のカービィ 夢の泉の物語”ではこのような経緯があったためか、著作権表記は”@1993 HAL LABORATORY, INC @1993 NINTENDO”となっており、NINTENDO側も著作権を所有するような記載に変わりました。ご存じの通り、現在の星のカービィシリーズでは”@HAL Laboratory, Inc./Nintendo”という記載に統一されています。
ハル研究所経営再建時は当時ハル研究所の社員だった岩田聡氏が社長となり、その後岩田聡氏は任天堂の社長となりました。経営再建時の資金援助も併せてハル研究所と任天堂の蜜月を踏まえて著作権の実態をどのように書くべきか悩みましたが、仰る通り”@HAL Laboratory, Inc./Nintendo”という著作権表記ですし、星のカービィシリーズの知的財産を管理する”株式会社ワープスター”はハル研究所50%任天堂50%であることも踏まえると、任天堂だけでなくHAL研究所も著作権を有していると考える方が自然ですね。
ちなみに、ポケモンは初代赤緑発売時は、ゲーム画面上は”@1995 GAME FREAK Inc.”、ゲームソフトの印字は”@1995 Nintendo @1995 Creatures Inc. @1995 GAME FREAK Inc.”となっていました。最初からこの三社が著作権を有している点で、星のカービィとの成り立ちの違いがあるのが面白いですね。